農工研ジャーナル|一般社団法人 長野県農村工業研究所

果実の食感・風味を活かした「信州果実コンポート」の商品化|農工研ジャーナル|一般社団法人 長野県農村工業研究所

作成者: JBN|Feb 19, 2022 3:48:05 AM

従来「果実コンポート」の課題

果実コンポートは糖、酸を加えて加熱殺菌することで、加工品として果実を長期間味わうことが可能となっています。しかし、褐変防止(酵素失活)および殺菌を目的とした加熱操作により、果実本来の風味、食感の劣化が課題となっています。
コンポートを一次加工品として利用する時では、二次加工(調理、加熱)によりさらにダメージを受けてしまいます。お菓子、デザート製造関係者からは糖度が高く二次加工中に離水しない(半乾燥品、高糖度コンポート)、生に近い食感で、剥皮、種取り、カット等の前処理がしてあり、一定期間の日持ちがするものが求められています。
そこで、収穫時期が限られた旬な果実の新鮮なシャキシャキ感を活かした長期保存可能な果実コンポートを開発し、消費者に信州の美味しい果物を長期に渡り味わっていただくことを目的に取り組んできました。

高品質へのこだわり

品目、品種のこだわり

信州産果実の成分、品質特性を解明し、また、高圧試験を行い、加工適性、消費者ならびに関係者らへのアンケートや評価により、品目と品種を絞り込みました。
桃では熟度の進行に伴う香り(風味)の増強、軟化が見られます。軟化した果肉は剥皮が困難で、操作性、歩留まりおよび型崩れによる品質の低下に繋がってしまうため、高品質な製品造りには原料の熟度を一定に揃えることも重要となってきます。
今回、風味、食感(硬さ)に優れた『だて白桃』、黄色の色調、適度な食感と酸味があり、消費者の評価の高かった『ワッサー』での商品化を決定しました。
リンゴは安定供給可能で、貯蔵性に優れ、褐変が遅く加工適性にも優れている『シナノゴールド』をメインに、シリーズ化を目標としてリンゴ三兄弟でもある『シナノスイート』、『秋映』としました。

製法(高圧処理)のこだわり

食品に100~700MPa程度の高圧処理を行うと、たんぱく質や澱粉の変性、酵素失活、殺菌・制菌などの効果が見られます。海抜約1万メートルに相当する100MPaの高圧と従来製品より低い温度による加熱を併用することで、熱ダメージ(軟化、型崩れ、色調劣化等)を最小限に抑えることが可能となりました。
また、パッケージは酸素を通しにくい包材にすることで、酸化による栄養成分の損失や色調の劣化を防いでいます。信州産の旬な採れたてブランド果実とこれら加工技術との融合により、シャキッとした食感を保持した長期貯蔵可能な製品に仕上がりました。

写真1:高圧果実コンポート(ワッサー)


写真2:高圧果実コンポート(リンゴ:シナノゴールド)

写真3:高圧果実コンポート(白桃:だて白桃)

  • 関連する特許

特許 第7209309号「食品に対する脱気、加熱、高圧処理方法」

(農研機構食品技術部門、石川県、長野県、長野農工研 共願)