安定した収穫量を確保する農薬の役割と安全性

農産物の品質・安全性評価
安定した収穫量を確保する農薬の役割と安全性

農薬は安定した食糧供給を実現する上で欠かせないものであり、安全性を担保した上で適切に使用することが重要です。ここでは、農薬が果たす役割やそのリスク評価についてご紹介します。

農薬の役割

農薬とは?

農薬は、農薬取締法という法律の中で定義されています。
その内容を要約すると、農薬とは、「農作物に害を与える生物やウイルスから作物を守ったり、作物の生育をコントロールしたりするために使用される薬剤など」を指すといえます。「薬剤など」と書いたとおり、実は一口に農薬といってもその範囲は幅広く、病害虫にとっての天敵や一部の微生物なども農薬に含まれています。

なぜ農薬が必要なのか?

これは、安定した収穫量を確保することが最大の目的だといえます。
一般社団法人日本植物防疫協会などが行った調査研究によると、農薬を使用しなかった場合には多くの品目で出荷可能品収量の減少が報告されており、特にりんごやももでは90%以上の減収という深刻な結果が得られています。もちろん、品目の違いや地域差などによって影響は異なりますが、安定的な食糧供給を実現する上で農薬が欠かせないものとなっていることは確かだといえるでしょう。
(参考:一般社団法人日本植物防疫協会『農薬を使用しないで栽培した場合の病害虫等の被害に関する調査報告

農薬の安全性

農薬のリスク評価

農薬が人体に与える影響の評価については、一日摂取許容量(ADI)を主眼として行われてきました。ADIとは、人が生涯にわたってその成分を毎日摂取し続けても何ら悪影響が生じないとされる量のことで、動物実験における結果などの科学的根拠をもとに、種差や個人差も考慮した安全係数(1/100)を掛け合わせて設定されます。
ADIは長期間の摂取によって現れる慢性的な毒性を評価したものですが、これに加えて近年は短時間(24時間以内)での影響を評価する急性参照容量(ARfD)も農薬のリスク評価として用いられるようになってきました。
つまり、短期間での影響と長期間での影響を両方考慮した、厳格で複合的な評価が行われるということです。

農薬の残留基準

野菜や果物、肉や魚など、食品には数多くの種類があり、それらの平均的な摂取量はそれぞれ異なります。
そこで、厚生労働省が毎年実施している国民健康・栄養調査などにより各食品の摂取量を把握し、各農薬の一日摂取許容量(ADI)や急性参照容量(ARfD)をもとに、国際基準なども参考にしながら残留基準値が設定されます。
つまり、農薬の残留基準値は食品の品目ごと、農薬ごとに十分に安全なレベルとして定められています。農薬の残留濃度が基準値を超える場合は、販売や輸入が食品衛生法により禁止されています。

  • 残留基準値の例
  アセタミプリド トリフロキシストロビン
りんご 2 ppm 3 ppm
レタス 10 ppm 15 ppm

ポジティブリスト制度

基準値を設定する際の考え方として、ネガティブリストとポジティブリストの2種類があります。
ネガティブリストとは「使用してはならないもの」をリスト化するもので、リストに挙がっていないものは規制の対象外となります。
一方で、ポジティブリストとは「使用を認めるもの」をリスト化するもので、リストに挙がっていないものは原則使用禁止となります。
農薬の残留規制は、従来はネガティブリストに基づいていましたが、2006年5月29日よりポジティブリスト制度が施行されました。これにより、リストに挙がっていない、つまり基準値が設定されていないものについては「一律基準」として0.01 ppmという非常に厳しい基準値が適用されることになりました。

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