乾燥食品の歴史と長野県伝統の市田柿

果実・野菜の乾燥加工

昔は貴重な栄養源(保存食)として親しまれてきた乾燥食品ですが、近年では簡便性や携帯性などに重点をおいた製品が増えています。ここではそんな乾燥食品の歴史や長野県伝統の乾燥食品についてお話ししたいと思います。

乾燥食品の歴史と技術革新

意外と古い乾燥食品の歴史

遺跡で発掘される乾燥食品

食品の乾燥の歴史は古く、日本においては三内丸山遺跡(紀元前2500~2000年)から木の実や豆類などの食料が自然乾燥され貯蔵されていたことが分かっています。世界的に見ても古い遺跡から乾燥された食料の痕跡が数多く発掘されています。

保存食としての乾燥

木の実や豆類はもちろんですが、肉や魚などの乾燥食品も多く見つかっています。狩猟後に解体して部位ごとに干したものや、そのまま(丸ごと)干したものも見つかっているようです。昔から日持ちのしない食品を保存するためや需給調整のために使われてきた技術だったんですね。
そんな昔の乾燥食品は、胃の内容物などがあったわけではないので正確にはわかりませんが、そのまま食べたり、あぶって食べていたようです。年代が少し進むと、煮たり葉っぱに包んで蒸したりして食べていたようです。そのままでは少し硬かったのかもしれませんね。

携帯食としての乾燥食品

戦争時の兵食として

『日本兵食史』によれば、昭和9年(1934年)に「兵食は平戦時において戦闘能力を維持し増進するために必要な経済的で栄養価のあるもので、なおかつ簡単なる調理法でなければならない」との記載があります。兵食(軍事用の食品)という特殊な用途ではあるものの、乾燥食品は人間の健康を維持・増進するために有益であると考えられていたことがうかがえます。

災害時(戦争時)の非常食として

阪神淡路大震災や東日本大震災の際にも注目された乾燥食品。非常食として家庭に常備している方も多いのではないでしょうか?
戦争時も避難する際に容易に持ち運べるように干し飯や乾パンなどの乾燥食品が重宝されました。使わなくて済むならその方がいいですが、もしもの時に生きていくために必要な食料です。

宇宙でも乾燥食品

ご存じの方も多いでしょうが、良く知られている宇宙食はフリーズドライ(凍結乾燥法)などの乾燥技術によって作られたものが多くあります。某コンビニの人気からあげや宇宙で出会えそうな名前のカップ焼きそばなども認証されています。ちなみにカップ焼きそばはお湯切りができないので、麺にお湯をすべて吸わせるタイプだそうです。

近代の乾燥食品

技術革新の乾燥食品

誰もが一度は食べたことがある即席めんも「油熱乾燥法」という技術によって作られた乾燥食品です。昭和33年に特許化され、様々な技術革新を遂げ、世界で愛されるカップラーメンが誕生しました。今なお新たな製造方法などが開発されており、お店で食べるラーメンに近づきつつあります。
近年の乾燥食品は「簡単かつ美味しい」という重要なキーワードがあります。「お湯を注ぐだけで本格的な味に!」以前は各家庭で作っていたお味噌汁もカップ一杯のお湯があれば本格的な料亭の味が再現できる時代になりました。昔の保存食としての位置づけから、料理として成り立って来ているように感じますね。

長野県の伝統的な乾燥食品

古くから親しまれてきた乾燥食品

寒天

諏訪地域を中心に盛んに作られていますが、その原料はテングサなどの海藻。「海なし県の長野でなぜ海藻?」と思われますが、そもそもは産地ではなかったそうです。海辺の地域に出稼ぎに行っていた職人が故郷に技術を持ち帰ったのが始まりだそうです。ちょうどそのタイミングで鉄道が開通したことも発展につながりました。低温かつ乾燥した内陸の気候が寒天づくりに最適だったんですね。

凍み豆腐

高野豆腐、氷豆腐など名称は様々ですが炊き合わせ等でおなじみですね。生産の由来は諸説ありますが、以前は甲信越地方から東北・北海道地方に至るまで寒さの厳しい地域で作られてきました。工業的に生産が可能になった現在、実は国内で販売されている凍み豆腐の9割以上が長野県で生産されているのです。

そのほかの乾燥食品
  • 干そば
  • 凍み大根
  • ひたし豆
  • 干しかぼちゃ
  • 凍りもち
  • 柚餅子 など

伝統ある市田柿

600年以上前を起源とする市田柿

市田柿という名称で東京や名古屋、大阪に出荷が始まったのは1921年(大正10年)と言われており、100年という長きにわたり干し柿ファンを魅了して来たことが伺えます。
そして、その基礎となった渋柿の生産は、実は600年以上前から始まっていたとされています。飯田下伊那地域の歴史を語る上でなくてはならないもの、それが市田柿です。

天日乾燥市田柿

認められ続けたワケ

市田柿は1952年(昭和27年)に長野県の奨励品目になりました。その後、2006年(平成18年)に長野県で初めて地域ブランド(地域団体商標)に認定され、2016年(平成28年)には農水省の地理的表示保護制度(GI)に登録されました。これは、産地が一体となり伝統的な生産方法だけではなく、常に新しい取組をし、品質向上を目指してきたからに他なりません。その証拠に高い品質を評価され国際的なコンクールでも素晴らしい受賞をしています。

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伝統の市田柿を守るために

市田柿の産地、JAみなみ信州では平成24年に市田柿発祥の地、下伊那郡高森町に「市田柿工房」が完成し稼働を始めました。ここでは当研究所と信州大学工学部が共同研究し得られた成果である、機械乾燥技術が導入されています。
通常(自然乾燥)であれば30~40日かかる乾燥期間が4.5日で終了します。生産者の高齢化、担い手不足、異常気象などに対応するため、JAが加工を担っています。HACCP認証も受けており、安全な市田柿の生産に一役かっています。

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次の100年、そして世界へ

100年前に市田柿を世に送り出した篤農家さんたちは現在の市田柿を見てどう思うでしょうか?GIの取得や機械乾燥など、近年の市田柿を取り巻く環境は劇的に変化しました。
しかし、100年前とは自然環境も法律も販売量も違います。違わないことと言えば市田柿という名称で美しく美味しい干し柿が今も世の中の人々を魅了しているということでしょう。その市田柿を守るために、そして次の100年さらには世界中の人を魅了するために私たちは伝統ある市田柿を科学の力を駆使して守っていきます。

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