乾燥加工の種類と導入検討のポイント
普段、何気なく食べている「乾燥食品」。実は、さまざまな加工法があります。ここでは、乾燥加工方法の種類とその特徴をご紹介します。
乾燥加工の分類と導入検討のポイント
まず、大きな分類としては「自然乾燥」と「人工乾燥」に分けられ、「両者の併用(ハイブリッド乾燥)」というものもあります。それぞれの特徴とメリット・デメリット、導入検討のポイントをご紹介します。
自然乾燥
自然乾燥では、飯田下伊那地域を中心に生産されている市田柿の天日乾燥や、茅野や諏訪地域で生産が盛んな、厳寒期の風物詩としても知られる天日による棒寒天の製造も常圧凍結乾燥という自然乾燥技術によるものです。
また、イカの一夜干し、家庭で作る干しシイタケや切干大根なども自然乾燥です。
- メリット
・じっくり乾かすことで特有の風味を付与できる。
・太陽光により一部の成分が増加することもある。
・導入コストが極めて安い。
・少量でも大量でも干す場所があれば可能。
- デメリット
・天候に左右されやすい。
・カビ(腐敗)が発生しやすい。
・条件によっては完全に乾かすことができない。
・細かな管理が必要。
・虫や動物の被害に遭いやすい。
自然乾燥の導入検討ポイント
これまでも自然乾燥を実施してきた生産者や自宅で収穫できた農産物の余剰分を自家用に加工したいと考えている方には最適です。気まぐれな天気にヤキモキしながらもそれを楽しめる、もしくは時間のある方にお勧めします。
人工乾燥
人工乾燥は、先に紹介したカップラーメンなどの他に、インスタント食品やお菓子など幅広く利用されているフリーズドライ食品を製造する真空凍結乾燥や、野菜チップスなどに利用されているバキュームフライ(減圧油熱式乾燥)などが挙げられます。
- メリット
・短期間での乾燥が可能。
・衛生的な環境を維持できる。
・天候の影響をほとんど受けない。
・乾燥の程度をコントロールしやすい。
・繰り返しの品質が安定しやすい。
- デメリット
・導入のコストが高い。
・ランニングコストが発生する。
・品目によって条件検討を行う必要がある。
・乾燥機のサイズによって1回で生産できる数量が限定される。
人工乾燥の導入検討ポイント
工業的に乾燥食品を作りたい方や、本格的な販売を検討されている方にお勧めです。また、自宅でも確実に乾燥食品を失敗なく作りたい方にも最適です。最近はコンパクトな乾燥機もたくさん出ています。
ハイブリッド乾燥
ハイブリッド乾燥といえばかっこよく聞こえますが、実際には自然乾燥と人工乾燥の併用です。市田柿の生産現場でも一部の生産者において初期乾燥を乾燥機で行い、その後に従来と同じ方法で乾燥する生産者がいます。
- メリット
・天日乾燥よりも短期間で製造することができる。
・天日乾燥特有の風味の付与が可能。
・初期乾燥で使用した場合、カビ等の発生を抑制できる。
- デメリット
・導入コストは人工乾燥とほとんど変わらないかやや高い。
・乾燥機の使用頻度が低くなる可能性がある。
・自然乾燥に移行した際にカビや害虫等の被害に遭う可能性がある。
ハイブリッド乾燥の導入検討ポイント
すでに自然乾燥で生産をされている農家さんで、今後生産量の増加が見込まれる場合や乾燥初期のカビのリスク低減、出荷調整などの明確な目的のある方にお勧めです。新たに始められる方にはイニシャルコストがかかるためあまりお勧めしません。
乾燥加工法の種類
自然乾燥の種類
自然環境で行われている乾燥にも種類はあります。ここでは食品に利用されている乾燥方法に特化してご紹介します。(この種類に関しては著者が特性上分類したもので学術的には同一として扱われるものもあります。)
通常天日乾燥
皆さんが一番イメージしやすい乾燥方法だと思います。陽に当てながら気温と風を当てながら乾かす方法です。この時、扇風機を使用してもハイブリッド乾燥にはなりません。夏が一番乾きそうと思われがちですが、湿度の高い地域では乾燥が進まないこともあります。夏は気温と太陽の強い日差しによる遠赤効果によって乾燥します。逆に冬は湿度が低く、乾燥した気候により乾燥が進みます。
日陰干し
直接日光が当たらない場所で気温と環境湿度、風を利用して乾燥させる方法です。水分が比較的少ないものや温度がかかってしまうと成分が分解してしまうもの、色が抜けてしまうもの等に適用します。自宅でドクダミ茶を作る場合や、玉ねぎの腐敗防止の乾燥、鷹の爪の乾燥などに適しています。
凍結天日乾燥
寒い地域で冬季に行われてきました。自然環境で凍結と解凍を繰り返し天日で乾燥させる方法です。最近では低温にならないこともあるため、人工的に凍結させた後に天日で乾燥させる方法もあります。代表的なものとしては、寒天や凍み大根、高野豆腐(凍み豆腐)などがあります。低温期に行われるため、腐敗しやすいものでも乾燥することができます。ただし、凍結後解凍して乾燥するため、スポンジ状(多孔質)になり、もともとの食感と大きく異なることがあります。
人工乾燥の種類
管理された施設内で行うものもここに含まれますが、ここではわかりやすくするために、機械的に管理された乾燥庫を対象としてご紹介します。
熱風乾燥
もっとも一般的な乾燥方法です。火力や電気ヒーター等の熱源から発せられた熱を利用して風を直接食品に当てながら乾燥させます。この手法をベースとして減圧環境下で乾燥させるタイプの乾燥機もあります。JAみなみ信州の市田柿工房で使用している乾燥機(気熱式減圧乾燥機)もこのタイプになります。通常の天日乾燥品を工業的に検討する場合はこの乾燥方法から始めることが多いです。
遠赤外線加熱乾燥
遠赤外線ヒーターを用いて加熱する方法です。風を当てない(弱い風が流れているものもある)ため乾燥するものが急速に温度上昇することはありませんが、ゆっくり、じんわりと温まっていきます。また、強い風を直接当てないため乾燥するものが大きいときには、表面が過乾燥になりにくいという利点もあります。あんぽ柿の生産現場などで利用されています。
凍結乾燥(フリーズドライ)
一般的にフリーズドライと呼ばれている方法です。凍結後に真空下で徐々に解凍させながら乾燥させます。専用の特殊な機械が必要です。お湯などですぐに溶解させたり戻すことが可能です。また、熱がかからないため風味が残りやすい製法です。お味噌汁などのスープ類やフルーツグラノーラに含まれるイチゴなどもこの方法で乾燥されているものが多くあります。また、インスタントコーヒーの顆粒が大きいものもこの方法で乾燥されているものがあります。
噴霧乾燥
スプレードライとして知られています。液体を容器内で噴霧させ熱風などを当てることで瞬間的に乾燥させると同時に微小粉末を得る乾燥方法です。工業的には良く知られた手法ですが、一般的にはあまり知られていません。微粉末のインスタントコーヒーや粉乳、粉末状調味料などで利用されています。乾燥時に熱を加えるため、香りが弱くなる傾向があります。
その他の乾燥加工方法
- 低温送風乾燥
- マイクロ波加熱乾燥
- 間接加熱乾燥
- 除湿空気乾燥
- 加圧乾燥
- 被膜乾燥
- 真空減圧乾燥
当研究所では熱風乾燥を中心に技術提案をしています。果実や野菜、きのこといった農産加工で乾燥食品をご検討の方は是非ご相談ください。